はてなダイアリーに書き込むこと自体1カ月以上ブランクがありまして、
記法を忘れかけていますが、それでもネタがちょっと降って来たのでこれは書くしかないだろう、と。
今回こそショートショートに書けるといい、な。
それでいい加減秋舞月をhtml化してサイトに収納しようと思います。
そしてテスト前に限ってネタが振ってくるのは何故でしょうか。
それでは本編どうぞ。設定は割と捏造が多いかもしれませぬ。
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「まあ……綺麗ですね」
「食べられるんですよ、これ」
「ええっ?!」
エメラルドのように煌めく大きな瞳を丸くして、心底驚いた、
という表情を見せたアルマナに、ゼオラ自身も驚かざるを得なかった。
確かに、レーツェルが作るケーキは見た目も味も超一級品、芸術と言い切れる代物で、
甘いものに興味津々な年頃の女の子が心惹かれないはずがない。現に、ゼオラ自身も、出撃した後と言うこともあり、
張り詰めた心を癒すご褒美として、この時を心待ちにしていたのだ。
だから、今日はアラドに何か言われても、踵落しなどで黙らせて、至福のひと時に浸ろうと思っていた。
アルマナ姫を誘ったのは、同じ年頃の女の子として、そしてお互い同じような悩みを持つ者として、
甘いものを食べつつ語らえたらいいなと思ったからだった。
しかし、テクノロジーでは地球より数十歩上を行くバルマーは、文化的には地球より数歩遅れて足取りを辿っており、
娯楽というものが存在しない。
遊ぶ時間は要らないし、食べ物も普段は生命維持に必要な最低限のモノだけ食べていればそれでいい。
何事に於いても、美しい外観よりも、機能性を重視するのが”バルマー流”であるらしい。
そんな環境で16年間生きてきた、バルマーの姫巫女様には、宝石のように美しく彩られた苺のタルトを
食べ物として認識するのは初見では不可能であったらしい。
「本当に、食べられるんですか?」
「ふふ、それじゃあ紅茶も淹れて一緒に食べましょう」
それにしても綺麗、本当に食べられるのかしら、とちょこまか動きながら
目まぐるしく仕草を変えるアルマナ姫は、女であるゼオラの目から見ても可愛らしくて、
こんな子に想われているクォヴレーは果報者ね、と目を細めた。
一口、口に含むと、甘酸っぱい豊かな苺の味と香りが口の中いっぱいに広がる。
そこに甘さを控えめに仕上げたカスタードクリームが加わると、クリームと苺のソースが絶妙に絡み合い、
苺の香りとカスタードクリームの上品な甘さが合わさりあう。
どちらもアルマナにとっては初めての経験であり、彼女はうっとりとした表情でつぶやいた。
「おいしい……」
そこから、この幸せな時間を引き延ばすように、少しずつ少しずつ、大切にケーキを食べ進めるアルマナと、
可愛いなあ、私ももう少し可愛くなれないかなと見つめるゼオラの元に、
機体の整備が終わったクォヴレーとアラドがやってきた。
「あーっ、ずるいぞゼオラ、先に美味そうなもの食いやがって!」
「まだあるわよ、それに、アンタは質よりも量の方を取るでしょ!」
違う、俺は質も量も取るんだ、性質悪いわよ、少しは控えなさい、と、アラドとゼオラはいつも通りの痴話喧嘩を始める。
そんな2人を見守りつつ、アルマナは熱く火照っていく頬に、止まりなさいと念じつつ、それでも何とかクォヴレーの顔を見上げて、
緊張のあまり数秒間黙りこくったあと、声をやや震わせながら笑い、彼に話しかけた。
「クォヴレーも、ケーキ、いかがですか……?」
こういう時、どう言い返せばいいのか。
一緒に食べるという選択をすればいいものを、この時クォヴレーは、数日前に同じ食堂で繰り広げられていた光景を思い出していた。
「アルマナ……」
「はい……」
「……あまり甘いものばかり食べていると、太るぞ」
ごすっ
「く、く、クォヴレーの、馬鹿っ!」
言葉と同時に放たれた右ストレートは、クォヴレーの鳩尾を適確に突いた。
怒りのこもった女性の怒りの一撃に、流石のクォヴレーも苦悶の表情を浮かべる。
百舌と隼の痴話喧嘩が中断されたのも、そのときだった。
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